Cayの趣味の日記

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藤井聡太四段の次の一手 (5)

藤井聡太四段が19連勝を賭けた対局。

後手:藤井

先手の近藤五段は1六の銀の働きが悪く、指しづらい状況。ここで藤井四段は才気あふれる差し回しを見せる。

 

 

 


いつの間にか悪くなっている

藤井四段の次の一手は8六歩。1六銀の位置により弱体化している近藤五段の陣形を飛車の横利きにより攻める構想だ。つまり普段3筋、4筋にいる銀が1筋にいるので、3筋、4筋の防御が薄い。
その後、

後手:藤井

6五桂と跳ねる。一見、危うい桂馬跳ねだ。7三歩成から8三角の両取りも見える。しかし、この桂馬は死なない。

 

 


天王山に角を放つ。ここに角を打つことが藤井の一連の構想だった。自陣には7三の歩成を受け、敵陣には2八飛と9九香及び7七の地点に睨みを利かしている。先手は陣形の差から飛車の交換は応じられないし、9九の香車を失うと後手からの7五香打ちが厳しい。


ここで注目して欲しいことはこれらの一連の指し手を通じてコンピュータ的には評価が拮抗していることだ。むしろ、藤井の形勢を損なうものと評価されている指し手も多い。対する近藤五段の対応も極めて自然なものだ。なのに、5五角まで来ると先手の勝ち筋が見つからず、もう先手が勝てないと言う。事実、その後の評価は下降の一途をたどる。つまり、8六歩から5五角までの一連の指し手で後手必勝の局面まで藤井に誘導されていったかの如くだ。

ここらへんの評価値に逆らうかのような指し回しは、いわゆるコンピュータソフト開発者が言うところの、ソフトを「説得」して「反省」させるという言葉を彷彿とさせる。
コンピュータにも読み切れない形勢判断の展望を藤井四段一流のセンスで感じ取っているのだろうか。